どうしようもなく辛い時。
とにかく何もかもから逃げ出したくなる時。
俺の背中をいつも押す言葉がある。
大学時代の先輩の言葉だ。
当時の俺はまだ十代で、本当にガキだった。
辛いことがあったらすぐ逃げたし、理不尽に感じたら影で愚痴をこぼしてた。
俺は空手部に入っていたが、思ったよりも稽古がきつく、いつやめても言い様に、退部届けをいつももちあるっていたほどだった。
ある日の稽古の時、その日はいつもよりハードな稽古が行なわれて、「もう今日でやめよう」と心に誓っていた。
辛そうな顔をして、腕も上げられないほど疲弊している俺に、当時の部長だった先輩が声をかけてきた。
「辛いか!?」
いいえ!大丈夫っす!!
先輩にNOと言える権限はなかったため、俺はいつもどおりの答えを返す。
だが、今日やめようとしていた俺は「!」1つ分足りなかったのを見事に見抜かれた。
先輩は自分も稽古をしながらこういった。
「まだ、倒れてないだろう!?倒れるまでやれ!大丈夫だ!」
一見、ただのスパルタやしごきのように聞こえるが、俺はこの言葉の重みを先輩の背中を見ながら痛感した。
先輩は俺以上の稽古量を毎日つんでいる。
毎晩酒を飲み、タバコを吸い、授業なんかサボってばかりだが、ただ口で言うだけではなくて、態度で示していたのだ。
まさに背中で語る男の美学。
自分以上に動き、辛さに耐え、稽古に励む人を見て、辞めたいなんて思えるはずもない。
倒れるまでやろう。
そう思った。
それ以来、俺は口だけの男にならないよう、胸を張って物を言えるようになろうと努力している。
当時の先輩の年齢をとうに通り越してはいるが、未だに先輩のあの背中には追いつかない。
その後、その先輩とは疎遠となってしまったのだが、先輩の強烈な印象はまだ消えない。
死にたいくらい辛い時、いつもあの言葉を思い出す。
…まだ倒れてないだろう?倒れるまでやれ。大丈夫だ!
きっと、俺には倒れるまで完全な休みはないのだろう。
でも、あの言葉のおかげで、人並み以上に頑張れるのだ。
さあ、今週は3連ちゃん20時間労働だ。
頑張るぞ!
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