記念すべき10日目だ。
この調子で1000回くらいは続けていこうと思う。
俺はやると言ったらやる男だと自負している。
話は変わるのだが、電車での話だ。
今日俺は任務が終わってヒビヤトレインで帰宅中だった。
満員に近いで車両で、俺はドアにもたれて立っていた。
終電も近く、周りには仕事帰りのビジネスマンと酒に酔った中年が一様に死んだ魚のような目をしながら電車に揺られていた。
ミノワステイションに到着した。
出向時は『もうミノワ』帰宅時は『まだミノワ』
ちょうど中間地点に位置するこのステイションに良い思い出はない。
発車間際になって、腰の曲がった老婆がゆっくりと乗車してきた。
老婆はドアに一番近い座席の前で柱にしがみつくようにしなだれかかる。
座席に目をやると学生風の若い男が、老婆に気づくそぶりもなく携帯ゲームに没頭している。
隣の太った中年ビジネスマンは老婆を目にした瞬間睡魔に襲われたらしい。
電車が発車した。
アルコールの匂いのする車両の中、何事もなかったように死んだ目をした隣人たちとの不思議な空間が再現される。
いつもの光景だ。
スラム街でなくとも、人間はどこまでも荒んでいく。
いつもと違ったのはそれからだ。
ちょっと。と若い女の声がした。
先ほどの老婆の反対側の席、ちょうど俺のすぐ右側からだった。
これからどこへ行くのか知らないが、先ほどまで睫毛を丹念に修復していた若い女だ。
夜の住人特有の服装と雰囲気をまとっている。
女は席を立つと前に立っていたビジネスマンたちを押しのけ、老婆の手を持った。
困惑する老婆と手を引く若い女、と言う奇妙な光景を俺は周りにいた死人たちと見守った。
女は無言で先ほどまで自分が座っていた席に老婆を案内した。
状況を理解した老婆は何度も何度も女に感謝の言葉を述べていた。
女は照れくさそうに愛想笑いと、ささやかな言葉で老婆に応じていた。
次の駅に着くまで老婆と女のやり取りは続いた。
サウスセンジュステーションで女が老婆に軽く会釈をして降りた。
そこからは誰も話さなくなった。
仕事帰りのビジネスマンと酒に酔った中年に囲まれたいつもの風景に戻る。
だが、そこに居合わせた隣人たちはきっと俺と同じようにいつもと違う気分を味わっていたことだろう。
俺はまだこの街も捨てた物じゃないなと考えていた。
女の行動を偽善と捉えるものもいたかもしれない。
しかしそう思う奴が何人いようが、俺以外全員そう考えていようが、女のとった行動は正しいし、先出の男たちより遥かに優れた人間だと思う。
まあつまり、何が言いたいかって言うと、他人が良い気分になれるような行動を俺もしなきゃなって話。
女に感謝。
あと、ブログのネタを提供してくれたことにも感謝。
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